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​話し合い、考え、学ぶ。

「熟慮」を伴う世論調査の方法

Image by Element5 Digital

皆様がお住みの日本に限らず、米国、英国など、多くの民主主義国が抱えている共通の問題の一つとして、民主主義の基盤となっている市民の政治的無関心が挙げられます。また同時に、たとえ政治に関心があったとしても、政治的テーマを話す相手の多くは、すでに自分と同じ考えや政治的信条を持っている人になりがちであり、自分と異なる意見を持つ人とは政治については話さない傾向があります。こうした傾向は特に米国では顕著になってきてます。

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この問題を解決する一つの手がかりとして政治学者の間で議論されているのが、「市民同士が正しい情報をもとに政治問題についてもっと話し合い解決策を見出していくべき」という考えであり「熟議民主主義」(Deliberative Democracy)と呼ばれています。

この「市民の政治的無関心」という問題は、世論調査の分野でも指摘されています。世論調査によって私たちは内閣支持率や政党支持率、特定政策の是非など、他の人々の意見を知ることができます。しかし、果たして世論調査に答えた人々は十分な知識を持ち質問に答えたのでしょうか。さらにいえば、回答者は、自分とは異なる意見も考慮したうえで回答したのでしょうか。

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今から約25年ほど前、米国の政治学者ジェイムズ・フィシュキン(James Fishkin)はこれらの問題点を考慮した上で新しい世論の調査方法を提案し「討論型世論調査」(Deliberative Polling、以下DP)と名付けました。

このDPでは、無作為抽出によって選ばれた市民が一か所に集い、数日かけて特定のテーマについて他の参加者とともに議論します。さらに参加者には、政治家や学者、専門家などに質問し、市民間との話し合いで生じた疑問点を明らかにする機会が与えられます。参加者はこの議論や質疑応答が行われるイベントに参加する前と参加した後にアンケートに回答します。それにより研究者は、話し合いや質疑応答を経験することによって参加者の意見がどのように変わったのか(あるいは変わらなかったのか)を分析することができます。


日本では2012年6月に日本政府の主催により、無作為抽出で選ばれた市民が全国から東京の慶応大学に集まり、今後のエネルギー問題について話し合いました

最近の討論型世論調査

2019年9月 米国テキサス州ダラス

全米から無作為に選出された約500名の米国市民がテキサス州ダラスに集い、3日間かけて経済、外交、環境、医療などについて熟慮を重ねました。このイベントはCNNニューヨークタイムズ紙など多くのメディアで取り上げられました。またバラク・オバマ前大統領もツイートするなど、多くの人から注目されました。

​オンライン討論型世論調査

AIを使った新Web会議システムでの実施

Image by Manuel Cosentino

​対面型が抱える問題点

これまでに世界各国で多くのDPが実施されましたが、問題の一つは実施にあたり多額な予算が必要であるという点です。DPの主催者は参加者の交通費、宿泊費、食事代、また謝礼金などを支払う必要があり、先ほどお話ししましたダラスでのDPには3億円以上の費用が使われました。

Image by Glenn Carstens-Peters

オンラインによる実施の長所

DPをオンラインで行うことができれば、参加者は移動する必要もなく、また主催者はその移動費や宿泊費を負担する必要がなく、DPを実施する可能性が広がります。

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専用Web会議システムを使って

今回私たちは、米国スタンフォード大学が開発した専用Web会議システムを使用します。

​​この新システムのプレスリリースはここからお読みください。

©2022 Shinya Wakao

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